「脳はお豆腐のように水に浮いている」と、よく例えられますが、まさに脳は脳脊髄液という液体に守られて存在しています。脳や脊髄は3枚の膜に覆われていて、そのうちの一枚であるクモ膜は、クモ膜下出血でも聞いたことがあると思います。
このクモ膜と、脳にピッタリと張り付いているように見える軟膜との間や脳内を、脳脊髄液は流れています。この脳脊髄液は脳内の老廃物(認知症患者の脳内に蓄積しているアミロイドβなども含む)の排出を促すと考えられています。
特にノンレム睡眠中に、脳波が大きな波状(徐派)となる頃(深い眠りの段階)に脳脊髄液が脳内のすき間に流れ込み、老廃物の除去を促進しているのであろうということが、米国の研究で示されました。統計的にヒトは、加齢と共に大きな波の徐派が少なくなります。
睡眠不足や加齢によって、脳脊髄液のひとつの働きである脳内の老廃物除去が妨げられたり、記憶力の低下が招かれるということが推測されます。ただしこの研究は、健康な若い世代のみで行われていて、年代による違い等はこれからの研究が待たれるところです。